【 娘がけいれん性発声障害になって 】


 「会話の始め言葉が出しにくくて困ってるの。」と言う娘。風邪をひいて声がかすれているものとばかり思っていた私は、近頃、娘が詰まりながら話をしていた事に気付きました。娘は声が出にくくて、とても苦しいと言うので、とりあえず行きつけの耳鼻科で診て頂きました。検査の結果は、ポリープもなく「異常なし」との事。異常があるから治してほしいという娘。大きな病院ならきっと治してもらえると期待して行った大学病院でも、「別に異常はないので3ヶ月後に又来てみなさい。」と言われ、何の薬も貰えずがっかりして帰ってきました。今まで自然に出ていた声がすぐ出てこない事で苦しみ悩んでいる娘に、私も親としてどうにかしてやりたいとの思いで、発声の方法をアドバイスしたり、心の問題では……等と言ってみたりしていました。

 その頃、娘は毎日インターネットで声の病気の事を調べていました。何日かして゛けいれん性発声障害゛という病名を見つけ、自分の症状にとても似ているというので資料を集めているうち、
SDの会の存在を知りました。会から、病気についての資料や、やまびこ通信を送って頂いた時は、親子共々感激致しました。けいれん性発声障害という病名が分るまでの暗く長いトンネルをぬけ、ようやく明かりが見えた思いでした。それと同時に家族の病気に対する理解も必要である事が分りました。親としては、いつも元気な娘が声が出にくいという事だけで病人として扱われなければいけないということにどうしても納得がいきませんでした。でも、娘は現実に声が出なくて苦しんでいます。そしてどうにかして元通り声が出るようになりたいと望んでいるのです。

 私も親として娘の望みを叶えてやる事が一番ではないかと考えました。でも、ボツリヌストキシン注射を喉に打つことが現在は最良の治療法であることを理解するのには少し時間がかかりました。折もおり、新聞でボツリヌス菌による殺人事件の報道があった直後だったので、その様な猛毒を注射して本当に大丈夫なのか、とても心配でした。でも娘が注射を受けてみたいと希望しているし、現に声の事で苦しんでおられる方々がその治療法で救われているのだったら、一度思い切ってその治療を受けてみるのも一つの方法ではないかと考え、主人と私と娘の3人で市原病院へ出かけました。

 ボツリヌストキシンの注射による治療法は考えていた程大変なものではなく、短時間で終わり、
SDの会にも入会させて頂き心強い思いで帰って参りました。娘は大学4年生で就職活動中、声が出にくいという事で思うように出来ないでいましたが、治療の後、おかげ様で就職先も決まり、現在は卒業を待つばかりです。社会人となる4月を希望を持って迎えられる様になったのも、小林先生はじめ、SDの会の方々のおかげだと感謝しております。本当にありがとうございました。