毎 日 新 聞 

2000年(平成12年)328日 火曜日 夕刊(4版博) より

緊張すると話せない
 『けいれん性発声障害』知って

患者らが全国組織


 声門が閉じ過ぎで声が詰まる「けいれん性発声障害」(SD=スパスモディック・ディフォーニア)の患者らがこのほどこの障害を広く知ってもらおうと全国組織「SDの会」(36人)を設立した。原因不明で治療法も確立しておらず、会を情報交換や相談の場にしていく。 設立したのはSD患者の福岡市城南区、言語聴覚士、中西由佳さん(32)ら。中西さんによると、SDは筋肉の緊張による障害で、吃音と異なり、締め付けられるようなとぎれとぎれの声になるという。心理的に緊張した場面でよく起こり、病院でも「単なるあがり症」と診断されやすい。就職時に差別を受けたり、精神的苦痛からアルコール依存症になる患者もいる。また周囲から力を抜いて」などと言われることが逆に心理的負担になることもあるという。 中西さんは15歳で声の異常に気付いたが、SDと診断されたのは24歳の時。この間、あがり症と思い込み悩んだ経験から、援助組織の必要性を感じたという。
 現在、帝京大医学部付属市原病院(千葉県市原市)の小林武夫教授の冶療を受けており、同じ治療を受ける人たちに呼びかけて会を作った。小林教授はボツリヌス菌から抽出した毒素「ボツリヌストキシン」を患者の声帯に注射し、筋肉の緊張を和らげる治療をしている。「
10年間で88人を治療したが、決定的な治療法はない」と言う。会は年数回の意見交換会や、インターネットのホームページで情報を発信する。中西さんは「家族にも分かってもらえないつらさがある。社会的により認知されて、生活しやすくしたい」と話している。
【徳永 敬】


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