やまびこ通信
 vol.2 2000 春号

≪第2回ミーティング報告≫

2回目のミーティングが開催されました。今回は、たっぷりと時間を取ってのミーティングとなりました。

少しずつですが会活動が軌道に乗ってきたように感じています。
 
何より、病院での待合室の様子が一変しました!会を作るということがこんなに素敵なことだったのかと、あらためて実感しています。
 
ミーティング報告には、正式名称や代表者の決定、広報活動の報告、パンフレット作成案、など、今回も盛りだくさんの話題があります。
 
ミーティングの様子は進行で実際に使用したプログラムに沿って順に掲載いたしましたので、それぞれの項目をクリックしてご覧ください。
 
また、ページの最後に次回ミーティングの予告も掲載しておりますので、

今回参加していただいた方も参加できなかった方も、次回のミーティングにはぜひご参加ください。
日時 2000年 311日(土曜日)午後5:45〜9:00
場所 東京都港区障害者保健福祉会館 会議室
出席者 会員11
≪プログラム≫

 SDの会広報活動について

会の活動をより多くの人に知っていただくため、広報活動をスタートしました。その経過について報告いたします。

去年の暮れに村野先生から、朝日新聞の記者と会って話をしてみないかというご提案がありました。
1月下旬に記者の方とお会いし、SDの会や痙攣性発声障害、また私たちの社会的不利についてご説明させていただきました。
医学的なお話の詳しいことは私の方からは無理ですので、小林武夫先生にご連絡をとって頂くようにお願いをしましたが、
あいにく先生のほうへのご連絡はなかったようです。
 
そんな話の最中、敗者復活戦とでもいいましょうか、毎日新聞の福岡南支局の支局長と話をすることができました。
そして遂に記事化が実現となりました!

それからもう一つ。熊本日日新聞という地方新聞社に掲載されました。有り難いことにとても大きな掲載記事です。
これらの記事によって、潜在的にいる
SDの患者さんの掘り起こしやSDを持つ人の社会的不利の軽減、
何より、社会的認知の向上が少しでも高まることを切に願います。
 
最後に、このたびの取材に関して、いつもご多忙な小林武夫先生に大変なご無理を申し上げしました。

(この二つの取材のどちらにも、小林武夫先生が立ち会ってくださったのです!)会を代表して心より感謝申し上げます。



熊本日日新聞 平成12年3月28日火曜日 朝刊より


毎日新聞 平成12年3月28日火曜日 夕刊(4版博)より




 日常生活上の支障について考える

私たちは、どんな場面で困難を生じ、どんな風に社会的不利益をこうむってしまうのか。
会員自らが、こうした問題の具体的場面を考えていく努力をしました。
一般の人たちによりよく
SDについて知っていただくために、このような具体的問題をあげることが、とても大切なことだと考えています。

SDを持つ人が社会生活を送る上で、その症状によってどれだけの支障をきたしているか。
これを測る方法は、今までは医療側の判断のみに委ねられていました。
しかし、声の調子が良い・悪いといったことは、本人でしか自覚できない部分が多いものです。
こうしたことを受けて、いま医療の現場では、
SDを持つ人に自分で評価してもらうための、統一した規準を確立しようという動きがあります。 
この声の自覚的評価表を考案するため、日本大学駿河台病院の牧山清医師から、
SDの会の皆さんに協力依頼がありました。
「日常生活で具体的に困る場面は、どんな時ですか?」というものです。
2回ミーティングで具体的内容としてあげられたものをまとめてお知らせします。


お店でオーダーする/切符を買う/美容院に行く/ファーストフードで注文する/デパートでの定員さんとの会話/

耳の遠い人と会話する/あらたまった話をする/大きな声を出す必要がある/訪問先での最初のご挨拶(ごめんください、など)/

周りの人に聞きづらそうな顔をされる/人前で挨拶をする/相手に自分の声が聞き取れず、聞き返される/

抑揚をつけて話をする/電話をかける/電話をとる  
etc


 Q&Aコーナー(薬の副作用)


 今回の
Q&Aは、『薬の副作用』についての特集です。
 お問い合わせやご意見の中では質問が最も多く、副作用に対する関心の高さがうかがえます。

 治療を始めて10年目。この期間からは断言できない。

これが薬の副作用に関する現段階での状況です。
世界的に見ても、ボツリヌストキシンが痙攣性発声障害の治療に使用されるようになって、まだそれほど時間が経っていません。
小林先生が日本でこの治療をされるようになって、ちょうど
10年。
まだ症例数も少なく、現段階では、副作用の報告こそないが、完全にないとは断言できないのです。
ただし、過去の症例では、吹き出物が出たという方が1名いらっしゃるだけで、特に問題は起きていないということでした。

 抗体はできるか?

ある特定の薬ばかりを使用すると体の中にこの薬に対する耐性ができて、薬が効かなくなってくるといったことが心配されます。
つまり体内に抗体ができたことで、薬の効力が低下するというわけです。
【ボツリヌストキシンは抗体ができる】ということがすでに報告されています。

しかしながら、けいれん性発声障害の治療で使用する薬の量はごくわずかなものであり、抗体の心配はないとのことです。
また、ボツリヌストキシンには
数種類のタイプ(A~G型)が存在しています。抗体ができたとしても、
タイプの異なるボツリヌストキシンを使用することで対応できると考えられています。

 
 
 ボツリヌス毒素について
 
ボツリヌス毒素は、グラム陰性偏性嫌気性桿菌であるボツリヌス菌(
Clostridium botulinum)により産生される、
分子量約
15万の単鎖polypeptideです。この毒素は神経筋接合部に作用してアセチルコリンの放出を抑制する働きをもつため,これを利用した筋肉異常収縮の抑制を目的として臨床応用されています。

毒素のタイプはその抗原性の差により
AからGに分類されますが、
主に神経筋接合部のブロックの自的で臨床的治療に用いられているのは最も比活性の強いタイプ
Aです。
この毒素の臨床応用は,斜視の治療目的での外眼筋内注射に始まり、
痙撃性発声障害に対するボツリヌストキシンの内喉頭筋注射についてアメリカの
Blizew.Ludlowが報告を行っています。

毒素は通常凍結乾燥結晶として冷凍保存されています。使用時にはこれを生理食塩水にて溶解して用います。
毒素は熱に弱いため,溶解後も氷を敷き詰めた容器内に溶液を保管し,必要に応じて使用します。
また,溶液の震還によっても気泡を生じて毒素の不活化が起こるため,容器を強く振ることは避けるべきで、
解凍,溶解後は
4~5時問で毒素の活性が低下してくるため,速やかな使用が望ましいです。
そして、一度溶解した毒素を再凍結しておき再び用いることは、望ましくないのでおこないません。
 
 ポツリヌストキシンに対する抗体

現在のところ,一般的に痙撃性発声障害の治療のため臨床的に用いられているボツリヌストキシンはタイプ
Aです。
しかし,ボツリヌストキシンの薬効を維持すべく繰り返して注射していくうちに,
患者の体内にポツリヌストキシンタイプ
Aに対する抗毒素抗体が生じることがある。

今まではボツリヌストキシンの注射にて痙撃性音声の改善が得られていたにもかかわらず,
注入量がかわっていないのに次第に効果が少なくなってきたときは,抗体獲得を疑います。

抗体の産生は抗原提示量が多いほど,つまり使用する毒素量が多いほど生じやすく、
抗体獲得の頻度は
3~10%とされています。
痙攣性発声障害の治療には
5Unitと少量の使用であるため、抗体獲得はあまりないとされています。

抗体獲得の証明のためには血液検査による
bioasssayにてポツリヌストキシンに対する抗体価を測定するか,
または前額部にボツリヌストキシンを注射し,数日後の額のしわ寄せの可否によってトキシンの効果を判定します。
しわ寄せができなければトキシンの効果がみられていることになるが,
しわ寄せができる場合はそのトキシンの効果があらわれていないことになり,
そのトキシンに対する抗体の存在が疑われる。この場合は,ボツリヌストキシンのタイプを変更して用いる必要があります。


ボツリヌストキシン・タイプ
Fは,タイプAに対して交差抗原性を持たないため抗タイプA抗体陽性者にも有効です。
しかし,タイプ
Fの比活性は夕イプAのそれに比して低く、また治療効果の持続期間がタイプFはタイプAに比して短い
という欠点もあります。


以上のようなポツリヌストキシンに対する抗体産生を最小限にするためにも,
できるだけ注射頻度を減らすことが大切であると考えられています。


 治療中に妊娠した場合の影響

このことについても、前述の通り、現段階では『影響はない』とは断言できない状態です。
しかしながら、過去そのような報告はないそうです。
現時点では、妊娠している方へのボツリヌス注射は、念のために施行することはひかえているそうです。


海外SDサポートグループのご紹介

海外には、以前から痙攣性発声障害の患者の会(サポートグループ)があり、さまざまな活動をしています。
例えば、患者が置かれている状況を世間に広めたり、患者同士が情報を得ることを目的として、会報作成やパンフレット作成が行われています。
サポートグループの印刷物に限らず、英語で書かれた
SDに関する文献には、私たちにとって有益な情報がたくさんあるようです。


今回は資料として、以下の2グループのパンフレットを会員の方に翻訳していただきました。


  Australia SD support group のパンフレット

  NSDA(USA) support group のパンフレット

 
海外の文献を日本語に訳し、情報を提供していくチームを作りたいと考えています。
ボランティアでやってもいいよという方、是非ともご連絡ください!



≪次回ミーティング開催の予告≫


3回のミーティングを下記のように予定しています。会員の皆様には、詳細が決定しだい別途ご連絡いたします。


たくさんの方が参加できるよう、注射治療日に病院周辺でおこなう予定です。
このホームページをご覧になって、参加希望をなさる方は、お手数ですがあらかじめメールにて下記あてまでご連絡ください。

3回ミーティングのお知らせ


2000
6月上旬の土曜日

開催時間:13:00~

会場:千葉県姉ヶ崎市市原病院の近辺。

連絡先 e-mail  yukan@d3.dion.ne.jp