やまびこ通信 vol.6 2001年 秋号



やまびこ通信
Vol.6では、SDの会主催により平成13720日に
おこなわれた講演会の模様を中心にレポートしています。
この講演会は、毎日新聞社 西部社会福祉事業団の助成金により実現可能となりました。
厚くお礼申し上げます。また、会員からの
Q&Aコーナーも掲載いたしました。

SDの会主催講演会 『攣性発声障害「甲状披裂筋切除」について』
1.講演会の概要

1. 正常喉頭の解剖・生理
2. 発声の生理および成り立ち
3. なぜ人間だけが言葉を持つのか?歌うのか?
4. 声の病気
5. 痙攣性発声障害について
6. その病態
7. その治療法
8. 甲状披裂筋切除について
9. 手術を受けられた方からのお話
10.質疑応答 


平成
13720日、東京都障害者福祉会館に於いて、SDの会主催による講演会が行われました。
実際に治療している先生、手術を受けた方と直接お会いでき、お話が伺えたことは私たちにとって大変貴重なものとなりました。

それぞれがいろいろな想いを持ち帰ったことだと思います。
もちろん、現状の解決へと簡単にはつながらないかもしれません。
けれども話を聞いたり相談ができたり、そうした過程こそ大切で意味のあることのように感じます。
なお、講演会の模様はビデオに収録させていただきました。リクエストに応じて上映会を行います。

痙攣性発声障害の現在行われている主な外科的治療法には下記3タイプがあります。


1.ボツリヌストシキン施注
2.甲状軟骨形成術
3.甲状披裂筋切除術

今回の講演会では甲状披劣筋切除術を取り上げましたが、他の治療法についても講演会・勉強会を行う予定です。

謝辞: この講演会は、毎日新聞社 西部社会福祉事業団の助成金により実現可能となりました。
     厚くお礼申し上げます。


2.感想:講演会に参加して

手術という選択肢もあると前から耳にしていましたが、手術の内容についてはあまり知りませんでした。
今回は手術をされている先生から直接お話が聞けるということで、積極的に参加させていただきました。
先生は、大阪弁で話される、とても気さくな先生でした。私たち患者にも分かり易いように声帯の構造から、
声の成り立ち、手術について詳しく話してくださいました。私は、先生の話を聞きながら「えーそうなんだー」と感心ばかりしていました。
恥ずかしながら、自分の病気の事なのにあまりにも無知でした。
そして、実際に手術を受けられた患者さんの術前の声、ファイバースコープで見た声帯の画像、
手術のビデオを見ながらの説明は、医療の現場そのものでとてもリアルでした。
私は術後の声がどのような声になるのかとても気になっていたので、実際に手術された患者さんとお会いする事ができてよかったです。

3.手術の選択は慎重に

私は3年前受診した病院で初めて「痙攣性発声障害」と診断されました。
それまでいくつか他の病院を受診してきましたが、はっきりとした病名はつきませんでした。
その時、病名があるという喜びとともに、手術をすれば声がよくなると言われ、「これで治る!」という嬉しさのあまり、
何も理解もせず、また、不安を抱かないまま「反回神経切断術」を受けました。
しかし、約
1年後には術前の声に戻ってしまい、今は注射治療を受けています。
この手術の話を先生方にすると「もう、その手術はやっていないよ。声が悪くなる場合もあるからね。」と言われました。
私は術後の
1年間、のんきに「声が出る〜。うれし〜。」とルンルン気分でしたが、その話を聞いたときはぞっとしました。
もしかしたら、私の声が悪化していたかもしれないからです。

4.最終的な治療方法の選択は自分自身

今回、講演会に参加して思った事は、自分の病気について自分自身が知ることが大切という事。
また、私たちの病気には先生と患者の交流が必要だという事です。
「甲状披裂筋切除術」に興味をもたれた方もいると思います。
特に、軽くて注射治療ができない方、注射の効果が切れる時の不安感が大きい方、遠方から通うのが大変な方・・・。

しかし、症例がまだ少ない上に、他の手術も術後の経過報告が十分になされていない状況です。
例えば、術後詰まりがなくなっても、ガラガラ声になる恐れもあるし、その声質を調整するために音声訓練を必要とする場合もあります。
患者自身にとって詰まりがなくなる事と、声質が良くなるという事は決して同一のものではないのです。
手術に限りませんが、何事も先生とよく話し合い、患者自身の意思を伝え、十分理解し、納得した上で治療を受けてください。

また、インフォームドコンセントまではいきませんが、講演会で直接先生からいろいろなお話を聞いたり、手術をした会員などにいつでも相談してください。
電話、メール、手紙でも構いません。まずは知ることが必要です。

最後に、今回このような講演会を開いていただき、ご尽力いただいた医療関係者や、
SDの会のみなさんに感謝しています。

 会員からの質問コーナー



  
Q. みなさんは、病気の事を友達に話されていますか?

A1.

私は、詰まり始めて28年になります。去年初めて注射を受けるまでは、「声がおかしい人」で通っていたようです。
自分でも、どういう事で詰まったり震えたりするのか分からなかった訳ですから、たとえ聞かれても答えようがありませんでした。
でも今は、聞いてくださる方には「痙攣性発声障害で…、ボツリヌス注射を受けて…」 と、お話しています。
そう話せる事が、有難いなとも思っています。話してみると、その方が過去にも同じような症状の方と出会っていたりすることがあり患者数もそう少ない訳ではないのかもしれないなと思ったりします。
 
ご事情は分かりませんが、話してみてはいかがですか?お友達だったら、「聞いたら悪いかな…」 って心配してるかもしれませんよ。それに「痙攣性発声障害」というのがあるという事も分かっていただけますしね。

A2.

私は友達には話しています。前の会社の友達、先輩、大学の友達、テニス仲間とか、友達には全員話しています。そうではないと、楽しく遊べないでしょ?声を気にして話せないし…。
ただ、今勤めている職場の方には話していません。これではいけないと反省しています。
やはり話さないと症状が出ないように…と余計な神経を使ってしまい、疲れてしまいます。
このままだと長続きしないですよね。友達ならきっと理解してくれると思います。

A3.

親友と呼べる数人にしか話をしたことはありません。またその後も、経過を報告したりはしていません。
深く何度も聞かなくとも、私の苦しみも無言のうちに理解してくれるだろうと信じられる人。
その存在だけで私はある程度落ち着きをとり戻すことができます。
この病気を理解することは自分自身でさえ難しいですから、周りの人に十分な説明も出来ないまま「精神的な病気?」と誤解され、変に気を使われたり、特別扱いされる方が私にとっては苦痛です。
 
注射が切れ、どうしようもなくなった頃には「喉が昔から弱いので体調が崩れると息苦しくなり詰まりますが、しばらくすれば治ります。」と周囲には説明して、自分にも治るんだと言い聞かせています。

でもこれは認知度が低いから?我慢してしまうのだけなのかもしれません。